宮園家のリビングに時計の秒針が奏でる、コッチ、コッチ、コッチという機械音だけが響く。規則正しく時を刻む一定のリズムは人を深い思考に誘う。ダイニングテーブルに肘をつき、両手を顔の前で合わせて祈るポーズの宮園邦彦は、ここにいない妻のことを考えた。
予定では十八時に帰ってくるはずだが既に二十時を回っている。帰りが遅くなる連絡はない。
妻になにかあったのだろうか。結婚三年目の愛妻・舞歌の安否を気づかう。それは身勝手な話だと知りながら。なにかあったのかって? なにか起こすために妻を他の男と出かけさせたんじゃないか。
出がけに見せた舞歌の後ろ姿がよみがえる。彼女は尻を撫でようとする男の手をつねっていた。あくまで自分たちは邦彦のしょうもない性的嗜好に付き合うだけで、本物の恋人や夫婦じゃないのだから馴れ馴れしくするなと説教する舞歌の怒った顔。彼女の剣幕に高校の後輩だった|土井瞳哉《どいとうや》は、恐れおののきながら大袈裟に謝った。
二人の力関係が垣間見られるやり取りに邦彦はほっとした。これなら主導権は舞歌にある。彼女がうまいこと彼をコントロールしてくれるはずだ。そう思っていた。浅はかだったのでは?
彼が大人しく舞歌の尻に敷かれていたのは、そこが他人から見られる往来だからであり、彼女の夫である自分がいたからで、密室に二人きりの状況なら男の腕力に物を言わせることだって可能だ。
「舞歌」
ぽそりと邦彦が名前を呼んだとき、タイミングを見計らったかのように玄関で鍵の回る音がした。
居ても立っても居られず邦彦は玄関に駈け出す。
「ただいま」
「あっ、お帰り」
心配していた夫とは対照的な妻の何の気ない挨拶に邦彦のほうが面食らった。
妻の舞歌はセミロングの黒髪に整った顔立ちをしており、吊り目気味で意志の強さを感じさせる。十代の一時期やんちゃしていた時期もあったらしいが、現在は仕事と主婦業を両立させる素晴らしい妻だ。常々、邦彦は彼女と結婚できたことが、自分の人生で最大の幸運だと思っている。
性格は男っぽいところもあり物事に執着せず、竹を割ったような思考の持ち主。いまも気を揉む邦彦に対して、舞歌は普段と変わらず振る舞っている。
舞歌は玄関に靴を揃えて脱ぐと「ちょっと退いて」と言いながら邦彦の横をすり抜け、洗面所で手を洗い出す。
「どうだった?」
「シテきたよ」
当たり前でしょと言わんばかりの舞歌に対して、邦彦はリアクションの薄さに眉をひそめる。それだけか。もっと他に言うことがあるんじゃないか。だって夫じゃない男に抱かれてきたんだぞ。
「よかった?」
「まあまあかな」
舞歌はコップに水を汲んでうがいする。ガラガラガラと喉で水を泡立て、ペッと吐き出す動作を三回繰り返した。その間に邦彦は追加の質問をせず、じっと黙って彼女が話し始めることを期待して待った。
「思ったよりはよかったよ。でもAVや漫画みたく『あ~ん、おちんちん大きい、旦那よりすごーい』とはならなかった。相手が瞳哉じゃ気も抜けるしね」
「そっか。遅かったから心配したよ」
「あいつしつけーんだよ。あたしが全然イカないから今度こそイカせますつって何度も、何度も入れてきて、いい加減うぜぇから最後の一回、最後の一回って土下座する頭踏んづけてやった」
ラブホテルの一室で妻が土下座する男の頭を踏んでいる。非日常的な光景を想像して邦彦は小さく笑いを漏らす。
「お疲れ様。今日はどうする? お風呂沸いてるし、ご飯も用意あるけど」
「パス。風呂は入ってきたし、メシより眠い。あいつに付き合わされてクタクタ」
そっかと答える邦彦の目を、じっと舞歌が見つめてくる。心に抱えた後ろめたさを見透かす視線が突き刺さる。彼女の瞳に囚われて邦彦は目が逸らせないでいた。
「後悔してる? 自分の女を他の男に抱かせたこと」
「ちょっとだけ」
「だから言ったじゃん」
舞歌は呆れたと溜め息をつく。
「後悔するくらいなら最初からさせんなよな」
「ごめん」
彼女の言うとおりで邦彦はシンプルな謝罪の言葉しか出てこない。
「あたしは寝るけど?」
「僕はもう少し起きてるよ」
「そっ。お休み」
「舞歌」
邦彦は自分の前を横切り、寝室のほうへ歩く妻に声を掛けた。
「もしまた今日みたいなことしたいって言ったらどうする」
舞歌の足が止まる。彼女は振り返らない。表情が窺い知れない状態でなにかを考えている。
「してもいいよ。どうしてもって邦彦が頼むなら」
「相手は? また土井くんでいいかな」
「適当な相手を探してヤバい性癖持ちや変なおじさんが来るよりは、あいつのほうがマシかな」
消去法で選べばそうなる、と言う彼女の言い分を、どこか言い訳がましく感じてしまう。本心で言ってるのだろうか。それとも土井くんとのセックスは、次回を期待させるくらいよかったのか。
「お休み」
今度こそ話はお終いとばかりに言って彼女は寝室に消えた。
再び一人になった邦彦がリビングに戻ると、テーブルの上に置きっぱなしだったスマホが鳴る。拾い上げて画面を見る。相手は予想したとおり土井だった。
お約束していたものです。前後の余計な部分は取り除いてプレイ部分だけ残しました。
メッセージには音声ファイルが添えられていた。ダウンロードして再生する。
「んちゅ、ちゅ、んぅ、ぴちゃ、んはぁ……ん、ぁちゅ、んん……」
スピーカーから水っぽい音が聞こえてくる。邦彦は慌ててトレイに駆け込んだ。ドアを施錠してズボンの尻ポケットからイヤホンを引っ張り出す。音漏れしてないことを確かめてから両耳に嵌めた。
音声データの再生は続いていて、土井の話し声がする。
「うほぉっ、おっ♥ ほっ♥ 舞歌さんの口あったけぇ。俺のチンポ美味いッスか。相変わらず優しい尽くすタイプのフェラするんスね。もっとチンポ引っこ抜くえげつないしゃぶり方しそうなのに」
「くだらねえこと言ってないで早く射精しろ。お前のデカいから顎が疲れんだよ」
「覚えてますか。高校ンとき罰ゲームで舞歌さんがフェラ抜きしてくれたこと。俺まだ童貞だったから人生初フェラだったんスよ。十年ぶりにチンポ咥えてもらえて感激ッス!」
「忘れろ!」
頭を殴られたような衝撃があった。二人の距離が妙に近いとは思ったが、まさか過去に性的な接触があったとは。
「んっ、んっ、んんぶっ……れろっ、れろっ……早くイケよ。なんで出さねえんだよ」
「それなりに俺も経験を積んできたので簡単にはね。結婚してから旦那さんのチンポしか知らない舞歌さんより、俺のほうが|セックス《こっち》は上ッスよ。ほらほら休んでないで。先にフェラで一発抜いてくれないとチンポあげませんよ」
「調子のんな!」
噛みつくように言う舞歌だが、その後に聞こえてくるのは淫猥な水音。言葉では噛みついても口は土井のペニスに奉仕している。邦彦は妻の唇の感触を思い出して勃起させた。
「あむ、れろれろ、はむちゅちゅ、んじゅるるっ、んく、んぐ……」
「あ~登ってきた、精子登ってきましたよ、もう一押し欲しいな。根本まで咥えてもらっていいッスか」
「おぶっ! おっぼ……ぐぇっ、ぐぼおおっ!」
舞歌が息苦しそうに呻く。きっと土井が舞歌の頭を押さえつけているのだろう。
「気合い見してくださいよ。舞歌さん得意だったじゃないですか、気合い、根性」
「あっも……もっふぇ、もっふぅ……もっもっ……ふもおおお」
「旦那とのぬるいセックスしかしてないから鈍るんスよ。今日は俺が舞歌さんに女を思い出させてあげますからね」
土井には言葉責めして欲しいと事前に伝えてある。羞恥心を抱きながら感じてしまう舞歌で抜きたいから、と。土井は気が引けるなと言っていたが、行為に入ったら楽しそうに邦彦を見下し、舞歌に夫との違いを見せつける。
妻が自分のモノを咥えて苦しそうにしたことはあったろうか。いつも根本まで飲み込み、深いストロークで愛してくれた。それを邦彦は自分への愛が可能ならしめる行為と思っていたが、単にサイズが足りなくて易々と根本まで咥えられただけなのでは。
妻の呻き声を聞きながら邦彦はズボンごとパンツを下ろした。限界まで勃起したペニスが先走りに塗れた姿を見せる。オス臭いにおいが、ぷんと鼻をついた。
「おぶ……ぶっぽ……ぐっぽぉ、じゅる……もっほぉ……」
「いい感じッスよ。そのままバキュームして口全体を擦りつけながら扱いてください」
「んじゅるるっ! じゅるる! ちゅずずっ……ふじゅるるる!」
「今度は速くして」
「ぢゅぽッ! ぢゅぱっ! ぢゅぱッ! ぢゅぶっ! ぢゅぱっ! ぢゅぅ……! ぢゅぼっ! ぢゅぼっ! ぢゅぼっ! ぢゅぼっ! ぢゅぼっ! ぢゅっ! ぢゅぼっ!」
イヤホンから聞こえる水音が土井の指示に合わせて変化する。舞歌が――妻が男の言いなりになってる、いいように使われている。
嫌だと思う気持ちはある。妻が他人に性玩具の如く扱われるなんて胸が張り裂けそうだ。
それなのに下半身は記憶にないほど硬くなる。男のシンボルがかつてないほど熱を持つ。土井に自分とのセックスを馬鹿にされ、妻は恐らく自分よりも大きいであろうペニスをフェラチオさせられている。絶望的な状況なのに射精欲求が沸き上がる。射精したい。陰茎を思うさま弄くり回して本能のまま、精巣が空っぽになるまで射精し尽くしたい。
こんなことで興奮するなど絶対あってはならないことなのに、理性が蓋をしようとするほど本能が強く反発する。
邦彦は青臭いにおいを放つ肉棒に手を伸ばして扱き始める。
イヤホンから聞こえる妻のフェラチオ音をオカズにしながら。
「んちゅッ、じゅりゅりゅッ……んんッ、ちゅばッ……」
「そろそろ射精できそうッス。飲んでください」
淫らな水音に合わせて同じテンポで邦彦も手を動かす。
「出るッ! 出るッ! いくぞ舞歌! 飲めッ!」
「んぐぅ~ッ、んぐぅ~んッ、んうッ、んんっ、んっ、んぷぅッ!」
一瞬驚いたような反応を見せた|(聞かせた?)あと、なにかを飲み下す嚥下音が続く。出されてるのだ。口内に。舞歌が土井の精液を口で受け止めて飲んでいる。
妻が精液便所にされる姿を想像して邦彦も限界を迎えた。慌ててトイレットペーパーを被せようとするが、それよりも早く脈打つ肉棒は弾けた。スペルマが放物線を描いて辺りに飛び散る。トイレの中を白濁液が汚した。
「中に残ったのも吸い出してください。最後の一滴までごっくんよろしくッス」
「んっじゅる……じゅちゅるる……ぷはっ……はぁ、はぁ……てめぇ最後あたしのこと呼び捨てにしたろ」
「そうでした? 興奮しすぎてて覚えてないッス。気分が乗っちゃいましたね」
「クソがっ。おらチンポ出せ。さっさと入れて終わらせるぞ」
「いやいや。今度は俺が舞歌さんのまんこ舐める番でしょ」
「要らねえよ。さっさとゴム着けて入れろ」
「強情だな」
「なにすんだ」
イヤホンの向こうで人間の揉み合う音が聞こえる。合間に舞歌の「やめろ、離せ」という声が入る。まさか、恐れていた事態に邦彦は射精直後のアンニュイな気分から目覚め、聞こえてくる音に耳を澄ます。
「よっわ。舞歌さん本気で抵抗してます?」
「クソ野郎、死ね!」
「もともと男と女ッスもんね。俺は現場仕事で毎日ニクタイロードーしてるし。ほらほら舞歌さんの細腕じゃ無理なんだから、あきらめてまんこ出してくださいよ」
「畜生。馬鹿野郎」
「あんころは舞歌さんのこと囲ってる怖い先輩いたから手出せなかったけど、本当は当時からこうしてみたかったんッスよ。今回は旦那さんに感謝ッスね。あざま~す」
急に矛先が自分に向けられ邦彦は胃が鉛に変わったようにズンと重くなる。土井は邦彦がこれを聞くと知って語りかけているのだ。みすみす舞歌を狙っていた男に彼女の肉体を差し出したことに、いまさらながら後悔が押し寄せる。
「ご開帳っと。舞歌さんの生マンこうなってるんすね。人妻なのに色素の沈着ないし、ビラビラの飛び出しも少ないし、綺麗なもんじゃないッスか。恥ずかしがることないッスよ。自信持って見せてきましょ」
「うるせえクソ野郎……やれよ、クンニしたいんだろ、舐めたきゃ舐めろよ」
「嫌だな。捨て鉢にならないでくださいよ。だいたいチンポ入れるのはよくて、マンコ舐められるのはダメって基準が意味不明だし」
セックスは夫に頼まれた行為だから義務、フェラチオも挿入への準備だから仕方ない、だがクンニリングスは挿入に必要なものではないからダメ、おそらく舞歌の中ではそうしたルールがあったのだろう。
男に力尽くでねじ伏せられては無意味なマイルールだが。
「すげぇ。マジで俺が舞歌さんをまんぐり返ししてる。誠心誠意気持ちよくさせてもらうッス」
ちゅぱちゅぱとイヤホンから舐め回す音が聞こえる。土井が乙女の秘貝に舌を這わせているのだろう。れろれろとわざとらしく邦彦にも聞こえるように舐める。
「これが舞歌さんの生マンの味。想像以上に美味ッス。舐めても舐めてもお汁が出てきて……ぢゅずっ、ぢゅぞぞっ……ぢゅっじゅじゅぅぅぅぅ」
「ああんっ❤ そんなに舐めるなっ……あっあっ❤ 吸うのもやめろっ❤」
やめろと言いながら舞歌の声は濃厚なシロップのように甘い。音声だけでも土井の舌戯が巧みなことは伝わってきた。
「あっ、あんっ❤ ダメっ……舐めるら、ばらぁ……やめろっ❤ そんなとこっ……ああんっ❤ 舌が入ってくる……曈哉の長い舌、あたしのナカにぃ♥」
「俺、気持ちよくできてますか。舞歌さん俺に舐められて気持ちいいッスか」
イヤホン越しでも派手に響く水音、舞歌の蕩けきった声音を聞けば、彼女が土井に感じさせられてしまっていることは明白。そんなことは土井も承知のうえで、舞歌自身に言わせたがっている。
「れろっ……♥ れろっ♥ んっんっ♥ じゅるぅるるるるっ♥♥♥ っ、ふ、ふぅ♥」
「あっ♥ あっ♥ あっ♥ いいっ♥ あっ♥」
「舞歌さんの甘ったるい媚び媚びのメス声たまんねえッス。もっと気持ちよくなってください」
「ひっ♥ あひっ♥ あぁっ♥ やめっ♥ クリ弄るなバカぁ……あっあっあっ♥」
「舞歌さんのマンコ、ひくついてチンポ欲しそうにしてますよ。クパクパおねだりできて可愛いッスね」
「あんっ♥ あっ♥ あっ♥ あっ♥ あっ♥ あっ♥ あっ♥ これ、いいっ! すごく……いいっ♥ あんっ♥」
「上の口も正直になってきましたね。誰も聞いてないんだから言っちゃいましょうよ。マンコ舐められながらクリトリス指で転がされて気持ちいいんですよね」
「て、てめぇ調子乗って……あっ♥ あっ♥ んじゃねえぞっ……あっ♥ あっ♥ あっ♥ これが終わったら……おひっ♥ あンっ♥ あっ♥ 覚えてろよ」
「言われなくても舞歌さんのマンコ忘れらんねえッスよ。舞歌さんにも俺のチンポ忘れられなくしてあげますからね」
「ひぐッ♥ い、嫌だァ。こんなことぉ……! んぎぃぃっ♥ やっ、やめろばかぁ! そこっ、カリカリするなぁっ♥ やめ……やめっ……! あっ♥ あアアァア~~♥」
「クリちゃん指先で引っ掻かれてイッちゃいました?」
「イッへりゃい!」
「呂律回ってないじゃないッスか。腰もビクンビクン震えてますよ。強がっちゃって可愛いな~。それとも、もっとして欲しいってことッスか」
「りゃめっ♥ りゃめっ♥ ンっあああああ♥ イッてる! イッてるかりゃぁ♥ イッたばかりでびんかんりゃから、まんこなめるな♥ イキすぎてくるしいっ♥ いきできない~~~~♥♥」
「とんだ雑魚マンコじゃないっすか。こんなんなら高校時代も無理やりハメとくんだったな。一発ヤッたらセフレ確定っしょ」
「ちがっ♥ 違うのっ♥ こんなのっ、あたしじゃな、あっ、くぅぅ♥ んひぃっ、いっ、ひいいいいいいん♥」
「なにが違うんですか。昔パシリに使ってた後輩にマンコ舐められてイキまくってるヤリマン人妻が、舞歌さんの本性なんですよ。膣内も指でほぐしてあげますね」
「はひぃっ、あ、いうなぁ……♥ あっ、はぁぁぁぁう♥ オマンコだめぇ♥ いやっ、いやあぁぁぁぁ……♥」
「舞歌さんのGスポットはどこかな~。ここかな? それとも、ここかな?」
「そ、そんな、とこ……♥ あひっ♥ あっ、あっ、ああぁぁぁっ♥ も、もう、むり……♥」
「見つけた♥ 舞歌さんのきもちーとこ♥」
「あっ♥ んあぁぁぁっ♥♥ やっ、やぁっ♥ イっ♥ あっ♥ だめっ♥ んひぃっ♥ ゆ、ゆるして~~♥♥」
「気持ちよくしてあげてるのに許すもなにもないッスよ。Gスポもクリも触ってあげるからイキましょっか」
「やっ♥ や゛っ♥ こ、これっ♥ あっ♥ あっ♥ あっ♥ や゛ぁ〜〜〜〜っ♥♥ これっ♥ これだめっ♥ やっ♥ だめっ♥ いく♥ いくいくいくぅ♥ いく♥ いくぅぅぅぅぅぅ♥♥♥」
妻の絶頂に合わせて邦彦は溜めていた息を吐き出した。そのときまで自分が息を止めてることに気づかないほど、イヤホンから聞こえてくる二人の声に集中していた。
射精したばかりの男根が早くも硬さを取り戻している。こんなに早く回復したのは初めてだ。
「舞歌さ~ん、おーい」
「ひぇ♥ へぇ♥ あはっ♥ はっ♥」
「へばっちゃったか。まあ脱力してくれたほうが入れやすいッスけど」
「足は大きく開いて。腰の下に枕敷きましょっか。ちょっと腰浮かして……よしっ! 準備完了」
「ちょっと休ませろよ」
「早く入れて出して終わらせろと言ったのは舞歌さんじゃないッスか」
「さっきとは事情が違うだろ」
「なんスか事情って。言ってくれないと分からないな。事情あるなら俺も考えるのにな」
二人の会話がしばし途切れる。きっと舞歌は迷っている。ありのまま話すべきか、話さざるべきか。
「あっ♥ いやっ♥ さきっぽ入ってくる♥ だしいれするな……んんっ♥ んはっ♥ いりぐちこするなぁ♥」
「早くしないとドンドン入っちゃいますよ。ぬぷぬぷって舞歌さんのマン肉割って俺のチンポ入ってるの分かります?」
「わかる♥ あんたのチンポぉ♥ ふといからっ♥ はっ♥ やっ♥ ぜんぶわかっちゃう♥ あたしのことおかしたくてウズウズしてるのも♥ わかっちゃう♥」
「俺の前戯が上手くて何度もイカされて疲れたから、チンポ入れるの待って欲しいんでしょ」
「そう……あっ、硬い……あんたの前戯で何度もイカされて……はっ♥ ふとっ……あたし、何度もイカされたから……傘が引っかかって……ンひぃ! 少し休ませて」
「休ませてくださいッスよね。人に物を頼むなら」
「休ませてください。お願いします」
「よく言えました」
「――――ぅあっ♥ んっぐっ、んっ、んっ、あっ、あっ、あっ♥ あっ♥ っぁ、ぁあ♥♥ あっ♥ ぁぁ♥♥♥」
「俺のデカチンずるって入りましたよ、ずるって。濡れまくってましたもんね」
「なんでいれたあああああああ♥♥♥ あっ♥ あっ♥ 言ったら入れないって♥ てめぇ騙しやがったのかよぉぉっほおおお♥♥」
「俺は考えると言っただけで入れないなんて一言も言ってないッスよ。舞歌さんが勝手に都合よく勘違いしただけじゃないですか」
「てめぇ、てめっ、あっ♥ ころす……やっぱあとでころす……ッ!」
「怖いなあ。じゃあ足腰立たなくなるまでハメ回すしかないッスね。正当防衛ってやつ」
「おおぉ、おぉぉおおッ!♥ おぐっ! んおぉおぉッ!♥ んあ゛ぅッ、おぉお゛お゛お゛お゛!♥」
「チンポで奥突かれまくってだらしない顔しちゃって。先輩の威厳まったくないッスね。当時から俺らは舞歌さんでシコってオナペットにしてましたけど」
「そんな♥ むかしから……おくっ、つよっ♥ んほっ♥ ほぉっ♥ あたしのこと、そんな目で見てたのかよ」
「当たり前だろ馬鹿女が。お前は男と張り合えてるつもりだったか知らないが、先輩の囲いなかったら誰が女なんかにへーこらするかよ。デカい乳揺らして歩きやがって。なにカップだよ言ってみろ」
「なんでお前なんかにぃ♥」
「ぼーっとしてたから気づいてないかもしれないが、いま生で入れてるんだぜ」
「なっ! あっ♥ あっ♥ ばか抜けよ! 抜け!」
「やけにカリの形や高さまで分かると思わなかったか? お前の態度しだいではナカで出すことだってできるんだぞ」
「やだっ♥ ナカだしやだっ♥ やのに子宮ノックするな♥ 奥ばかり♥ ずるいっ♥」
「俺の質問には正直に答えろよ。なにカップだ」
「……きゅ、きゅうじゅうにのHカップ……です」
「Hカップだ! スケベ女にはお似合いのカップ数だな」
「言った! 言ったから抜いてゴム着けて」
「また勝手に都合よく勘違いしたな。俺は|膣内射精《なかだし》しないと言っただけでゴム着けるなんざ一言も言ってないだろ」
「あんっ♥ あんっ♥ でもっ、あんっ! だって、だって! あんっ、あんっ! 中出ししないって、約束したのにぃ♥」
「安心しろ。出すときは抜いてやるよ。もし暴発しても家に帰って旦那とヤレば大丈夫だろ。愛の力で浮気ザーメンなんか押し流しちまえ」
土井の言葉はますます乱暴になり、舞歌を都合のよい穴としか考えていない彼の考えが鮮明になる。
パンパンパンパンと小気味よい|打擲《ちょうちゃく》音が鳴り響き、女のよがり啼く声が合いの手に入る。自ら土井の前戯で感じてしまったことを認め、興奮覚め遣らぬうちに彼の肉棒をねじ込まれた舞歌は彼が与える官能の渦に飲み込まれている。
映像がない、音声だけのセックス実況は、それゆえに邦彦の想像力を逞しくする。己の妄想に刺激され屹立したペニスを彼は夢中で扱いた。
「あっ、あっ、あんんっ♥ んうっ♥ んぐぅ♥ ふっ♥ んぶっ! んむぅんんっ♥」
「舞歌のマン肉うねってきたぞ。射精おねだりタイムだ。どこに出して欲しいか言え」
「はうっ♥ うっ♥ うっ♥ お、お腹 んっ♥ んっ♥ んっ♥ お腹に、掛けてっ、あぁああっ♥ も、もうイク、イッちゃうぅうっ♥」
「あ~~イクイク、俺も……いくううう……んあッ!」
舞歌の絶頂宣言に続いて土井も気が抜けた声を出す。それを最後に打擲音は途切れ、舞歌の嬌声もセックスの余韻を楽しむ、か細いものに変わる。
妻のイキ声を聞きながら邦彦も二度目の射精を向かえた。
「ひっ、はっ、はっ、う、あっ……あっ、そっ、んなぁっ! 抜くって言っただろ! 腹に出せって言ったのに馬鹿野郎!」
「怒らないでくださいよ。本当に|膣内射精《こどもができること》するわけないじゃないッスか。生なんて嘘でゴムしてますよ。ほら」
「……命拾いしたな」
「ナカで出してたら本気で殺すつもりだったんスか」
「たりめえだろうが! 退けよ。いつまで乗っかってるつもりだ。出したなら用はねえんだよ」
先ほどまでの空気が嘘であったかのように、舞歌と土井の会話がセックス前と同じに戻っている。なにが起きてるんだと戸惑う邦彦の耳元に足音が近づく。
「聞いてるんだろ。あたしに内緒で馬鹿なことしやがって」
舞歌の声はマイクのすぐ傍で聞こえた。まだ少し荒い息を吐く音や、少し掠れた声が至近距離で聞こえる。
「あんたらがコソコソしてるから始まる前に曈哉をとっちめてやったら、ヤッてる音を録音して欲しいと頼んだんだって? 趣味悪すぎだろ。自分の女房を他の女に抱かせるだけでも引くのに……こんな変態趣味、あたしじゃなかったら付き合ってやらないんだからな。自分の女が寝取られたと思って興奮したろ? 感謝しろよ」
ほら、と舞歌が言って別の足音が近づいてくる。
「すいませーん、バレちゃいました」
土井の明るい声が聞こえて、彼の乱暴な態度も演技だったのかと驚かされる。
「舞歌さん勘が鋭いんスもん」
「お前らが嘘つくのヘタクソすぎんだよ」
「という訳なんで奥さん、お返しします。もちろんナカでは出してませんからね。これは絶対。本当。なんなら今晩、旦那さんが自分で確かめって痛ッ! 舞歌さん殴らないで」
「下らねえこと言ってんじゃねえよ。あんたもだ! いつまでもシコってないで寝ろ。明日も仕事あんだろ」
聞き慣れた妻の叱責に邦彦は苦笑を浮かべた。自分から寝取らせを頼んでおいてなんだが、もし妻が自分以外のセックスで本気になってしまったらと不安だった。その不安も寝取らせの興奮材料ではあるのだが、取り返しのつかないことになったらと恐れもあった。
邦彦は辺りに飛び散った精液の残骸を見遣る。やれやれ、まだ眠れそうにはない。片付けずに寝たら明朝に舞歌の雷が落ちる。
汚れた陰茎をトイレットペーパーで拭い、パンツとズボンを引き上げる。
スッキリ晴れ晴れとした気持ちで邦彦はトレイの掃除を始めた。
妻は無事に戻ってきた。すべては演技だったのだ。夫を興奮させるため大袈裟に感じた振りをしていた。
よかった、よかった。
そう結論づけて舞歌の帰りがやけに遅かったこと、一回だけで終わったにしては彼女がぐったり疲れていたことを頭から締め出した。
妻Sideに続く
寝取らせで気持ちよくなるはずないと言ってた妻のガチイキ音声で鬱勃起する旦那